2 平均在院日数 初めての師長会で恥をかく

 4月になり、師長となった奈須は、初めての師長会に出席した。師長会では、各病棟の平均在院日数やなどが発表された。先月の奈須が担当している外科病棟は、平均在院日数が15日で稼働率が75%であった。看護部長の斎藤から奈須へ、いくつか質問があった。

斎藤:ってどうやって出すか知ってるよね?

奈須:事務のコンピュータから自動で出てくるんですよね。

○師長会が一瞬で笑いに包まれた。

斎藤:じゃあ、これからホワイトボードに書くけど、平均在院日数は、直近3ヶ月間の入院患者の状況により算出されるのよ。そして、届出の病棟種別ごとに計算します。つまり、一般病棟なら一般病棟すべてをひとまとめにします。式を書くとこのようになります。(式1)病棟であれば、その病棟の3ヶ月間の延べ患者数を出します。例えば、1月に40床の病棟が90%稼働していれば、1ヶ月の述べ患者数は、40床×0.9(90%)×31日=1116日。3カ月であれば、1、2、3月の合計になります。仮に、3カ月(90日間)、病棟が90%で稼働しているとすれば、3240日となります。1ヶ月当たり、入院が72件あって退院が72件ならば、平均在院日数は、計算式に当てはめると(72件/月×3+72件/月×3)÷2で3240日を割って、15日となります。奈須さん以外も大丈夫よね。

根田:師長の間でも用語の統一ができていない気がするので、補足します。平均在院日数は、あくまで、病棟や病院全体の在院日数を便宜的に計算しているものです。個々の患者の在院日数の平均ではありません。だから、入院日数が長い人がいても、入院日数が短い人が多ければ、平均在院日数は短くなります。また、計算対象から外れる患者さんもいるから注意が必要です。

奈須:そうか、じゃあ、1月の平均在院日数が延びても、2月と3月が短ければ、いいのですね。ところでなぜ3ヶ月の移動平均なのでしょうか?

斎藤:それは、診療報酬点数表の病棟の平均在院日数の計算方法に記されています。

奈須:もう一点質問いいですか?なぜ、平均在院日数を下げる必要があるのでしょうか?いつも、もう少し入院している方が良いと、思われる患者も退院していってしまうことに、とても不満があります。

斎藤:それは、宿題ね。